第一話 うちの家計は火の車

 

「やったぁぁぁぁぁぁ!!」

澄み切った青空の下、県立天賦高校の正面玄関付近に設置されている掲示板の前で声たからかに叫ぶ一人の少年がいた。

「やった!受かったよーーーー!!」

その少年は喜びを隠しきれずに、周囲の人なんか関係なく跳びまわっていた。

 

「クソッ、北朝鮮へ亡命してミサイルでお前ら全員焼き殺してやるぅぅぅ!!」

と、ヒステリックな雄たけびをあげてなんか危ないことほざいてるやつや、

「おかしいザマス!あんなにワイロを送ったのに、うちのたっもちゃんが落ちるなんてありえないザマス!!はっ、まさかあの教頭のせいザマスね。キイィィィ〜〜〜!!抗議ザマス!行くザマスよたもっちゃん。」

と言って高級そうな服や宝石で身を包んでいるオバサンが、隣で

「うぇ〜ん、ママ〜。」

と泣きわめいている子の腕を引っ張って校長室に突撃していったっておかまいなし。

 

今日は3月24日。高校入試の合格発表の日である。

今年に中学を卒業した子供たちにとって今日は人生が大きく左右される重大な日である。

そんな日に合格発表をしている掲示板の前で勝利の雄たけびを叫んでいるこの少年は受験戦争という人生の難所の一つを勝って乗り越えたのだろう。

 

このさっきからはしゃぎまくっている少年。名を月無 努(つきなし つとむ)という。

努は今年に中学を卒業してこの県立天賦高校を受験したのだ。

この高校、成績はここらでいうと中の上ぐらいで別にものすごく偏差値が高いとか部活が強いとかそういうわけではなかった。

ただ、他の公立の進学校とは違って珍しくアルバイトが許可制で許されている高校なのだ。

なぜ努がここまでしてアルバイトが許されている高校に入りたかったのは理由があった。

それは・・・・・親の借金。

努の両親がつくった借金は数千万から数億といわれ、今も雪だるま式に増えているので現在でははっきりとした額がわからないという。

なぜこんなに借金ができたのか?

父の会社が倒産し新しい職にも就けないでいろいろなところからお金を借りすぎて返済不可能になったとか、長年付き合ってる親友に「連帯保証人になってくれ。」とか言われてついはんこを押して、その親友に逃げられて多額の借金を背負わされてしまったとかいうならまだ同情の余地があろう。

けれど、そんなことではないからタチが悪い。

努の父である相馬(そうば)は自称ギャンブラーという名の無職。

母の礼音(れいね)は重度のパチンコ中毒者。

努が小さいころから、相馬は競馬や競艇をやるためにさまざまな金融機関からお金を借りまくり、礼音もまたパチンコをやるためにさまざまな金融機関からお金を借りまくっていたのだった。


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