第四章

 

景助とは体育館で別れて、一人で昇降口へ向かった。

昇降口に陽太の姿はなく、春輝は靴箱にもたれかかって陽太が来るのを待った。

(それにしても今年の一年は思ったよりできそうなやつが多かったな)

そんなことを考えているうちに陽太が走って昇降口に来た。

「悪りぃ、待った?」

「別に。俺もちょっと前に来たばっかだから。」

「よし!じゃあ、行きますか。」

「おう。」

春輝と陽太は昇降口を出てプレイホームへ向かった。

 

途中、校門の両脇に桜の木がずらりと校庭を囲むように立っていた。

二人は足を止めて桜をながめた。

今年の桜は平年よりかなり開花が遅くて、ちょうど満開の時期を少し過ぎたところである。

桜の並木は春輝と陽太の二人の喜びを目一杯表すかのように咲き誇り、そして風に吹かれて落ちる桜の花びらは中学三年生になった彼らを祝福しているかのようだった。

 

「桜がきれいだな、春輝。」

「そうだなぁ、確かにきれいだ。でもおまえ桜がそんなに好きだっけ?」

からかうように春輝は言った。

「アホか、俺にだって自然に感動するときぐらいあるわ。」

陽太は少しムッとしながらも答えた。

「それに桜っていったら春に一番輝くものだろ?まさに、春輝、おまえのことだよ。」

「そう言われればそうかも。あんま深く考えたことなかったな。」

そっけない態度の春輝に陽太はあきれたように言った。

「ダメだなぁ、俺のようにおまえももう少し自然に興味を持て。」

「わかったよ。それにしても陽太にロマンチストが入ってるとは思わなかった。」

「男っていうのは生まれながらにしてロマンチストと相場が決まってるもんだ。」

「そんなもんかな。」

そういうと春輝は桜の下に移動して上を見上げた。

 

薄いピンクと鮮やかな白で美しく彩られ、大いに咲き誇る姿に春輝も少なからず感動していた。

一分も隙もなく完璧な桜。

それはその姿を見たものを安堵させ、美しさに心を揺れ動かされるものである。

けれど、春輝はその姿を見たときに一抹の不安を覚えた。

根拠なんてなかった。ただなんとなく心に引っかかった虚無感。

「さあ、桜も見たしプレイホームへ行くか。」

「あぁ・・・。」

今からプレイホームへ行って陽太とアレをやる。

心躍るような楽しみなのに校門を出てからも春輝の心に薄い靄はかかったままだった。

二人はプレイホームへと再び歩き出した。

 

 

 

人は誰もが知っている。

当たり前のようだけど意識していない。

 

 

 

桜というのは儚く散りゆくもの・・・





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