第2話 闘魂の炎
青い空。白い雲。太陽の光がとても暖かく感じる。季節は冬。今から模擬訓練があるのでグラウンドには人が50人ほどいる。
グラウンドには何も無くてただ、大きな魔法陣が画かれている。直径は100mほど先ほど先生が跡形も無く砕いたが元通り綺麗な魔法陣になっている。
次は生徒達があの魔法陣の中で犬のような形をした式神と戦わなければならない。
先生が生徒の名前を呼ぶ。生徒が返事をして魔法陣の中に入ると紙を1枚投げ入れる。紙が地面につくと同時にそれは犬のような形になり生徒を威嚇する。他の生徒達は戦っている生徒の応援をしている。
「ん〜!!いい天気だねぇ!」
供子があくびをしながらのびをしている。すぐそばで戦っている音がとてもうるさいのだが、全くと言っていいほど気にしていない様子。
「なぁ、今日の戦法はお前らはどうする?」
琢磨が声をかける。
「もちろん、拳で相手と語るぜ!!」
明はそう答えると腕を組む。供子の方はまだのびをしている。どうやら聞こえなかったみたいだ。
琢磨はやれやれ、と首を軽くふった。
明はクラスメイトとケンカをするときも魔法をあまり使わない。どうして使わないのか分からないが分からない。もしかしたら、男は拳で語るとかなんとかの情熱しかないのかもしれない。
そんなことを言っているが一応今回は魔法を使う気はあるのかもしれない。先ほどからウォーミングアップをしていて、主に武術の技の練習をしているが、時折魔法を使っている。今回は相手が人間でないだけに少し武術の技だけでは心配と見える。
「次!水鏡 明!」
「うっしゃあ!行ってくるぜ!」
とても意気込む明。明は少し興奮気に先生の下へ歩いていく。
琢磨と供子も明についていく。やはり、仲の良い友達を少しでも近くから応援したいようだ。
「明君、レベル1〜5の内どのぐらいに挑戦したい?」
「もちろん最高レベルの5でお願いします!!」
今回は調整ということもあってレベルを選べるようになっているのか、先生が明に尋ねる。
明は考えすに即答した。供子は何にも思ってないようだが琢磨は心配だった。先生に聞いてみるとさっきの生徒はレベル3だったそうだ。それまで戦っていた生徒が選んだレベルは1〜3だそうだ。2や3でもいい勝負をしていて中にはケガをした人もいる。なのにレベル5を選択した明を琢磨は心配していた。
「なぁ、レベルを3まで下げたらどうだ?」
琢磨は明に話しかける。琢磨の顔は真剣だった。
明は弱くない。勉強はともかく腕っぷしの強さならきっとクラス1だろう。レベル5の式神相手でも負けないと信じている。負けないと信じているが勝つことまでは信じていない。最悪相打ちをするだろう。
それに勝ったとしても大怪我をする可能性がある。今回は先生がいるので腕を食いちぎられたりしない限り先生が治してくれるだろう。
しかし、さすがに苦しむ姿を見たくは無い。それだけならまだいいが問題が別にあった。
琢磨はあることを心配していた。
「供子は大丈夫だと思うか?」
「?・・・あの時の事?いっつも大変な目にあってるけどあれが起きた事は1度もなかったじゃない。たくちゃんは心配しすぎだよ〜」
「それにね。人間殺ってやれないことはないんだよ。」
・・・あえて突っ込まないようにしよう。
確かに供子の言うとおり今まで大変なことがあった。でも最近胸騒ぎがするのだ心配だ。
しかし、あの時のことは明が原因だと決まったわけではない。もしかしたら供子、それか琢磨がやったのかもしれないし、他の全く知らない人かも知れなかった。
心配しても何も始まらないのか、琢磨は黙った。
「行ってくる!!」
「ケガすんなよ。」
「いってらっしゃ〜い!!おみやげよろしくね!」
・・・おみやげ?式神の毛皮を剥いでコートでも作れってことなのだろうか?そうだったら結構ひどいぞ。
供子の意味不明な言葉にも気にせずに明は魔法陣へ足をすすめる。その姿は堂々としている。
明が魔法陣の中に入るとポケットから何かを取り出す。手袋のようだ。しかし、ただの手袋ではない。その手袋は皮なのかゴムなのか、もしくは毛糸でできているのかもわからない。その手袋は明に吸いつくように手にフィットした。手の形が手袋の上からでも分かる。
黒い手袋をつけた明は意気込む。
「では、開始する。」
先生はそういうと紙を一枚投げ入れる。しばらく空中を舞い地面に付く。途端にそれは犬のようなものになる。
式神は明に向かって威嚇を始める。毛が逆立ちものすごく敵視しているのが分かる。
「では、始め!」
明は構える。
式神との距離は20mくらいだろうか。式神が襲い掛かってきたら一瞬にして間を詰められるだろう。それは都合よくなかった。小等部が唱えることができる短縮呪文は少しだけなのだ。短縮呪文でも間に合うか微妙なのに通常呪文を唱えていたらやられてしまう。
呪文は本人の気合を入れるための言葉のようなものであり、本人がその気になればかなり短くすることができるが、それでも数秒はかかってしまうし、小等部にそれほど短くできる技術のあるものはまずいない。今の明には相手の出方を伺うしかなかった。
明が静かに息を吐く。その時、式神は顔面めがけて飛び掛ってきた。
明はとっさに左に身をかわし、式神の攻撃をかわす。そして
「喰らいやがれ!」
式神の顔面めがけて人差し指を指す。そして小爆発。式神は少しひるんだようだ。そして明は式神に大きく手をかざす。
「止めを刺してやるぜ!!!」
さっきより大きな爆発。土煙が巻き上がる。
明は距離をとる。まだ倒せていないと思ったからだ。明に緊張がはしる。身構えてはいるがどこから来るか分からなかった。土煙を大きく巻き上げてしまったからだ。土煙に呑まれるようなことはなかったが前方に大きく広がってしまった。
足元に影ができている。そのことに気づいた明は上をみるが太陽がまぶしくて黒い影としか見れない。その黒い影は降りかかるように襲ってきた。
明は大きく一歩ステップをふむように下がった。その瞬間、目の前から式神が襲ってくる。
一撃。明は腹の辺りに受身をすることなく受けてしまった。筋肉による防御はしたがダメージは大きい。
式神は上から襲い掛かってくる物を受けた。明が巻き上げた土だった。土の量はそれほど多くはなく、ダメージはないようだった。
明は間合いを取ろうと下がったが足がふらつく、式神は隙を逃さず一気に襲い掛かった。
「ぐぅぁぁぁ・・・!!」
明の左肩に噛み付いた。かまれた箇所からは血が吹き出している。
目の焦点が合っていない。意識が遠のいているのが分かる。しかし、そんなことは構わずさらに力を入れる。
ゴリッ!!
「!!!」
鈍い音がする。明は声にならない声をあげる。今ので意識が戻ったようだ。
しかし、弱っているのは確かだった。何とか立っているが立つのがやっと、という感じで辛そうだ。しかし・・・
ベキッ!
何かが折れる音がする。骨が折れた音のようだ。犬の鳴き声が聞こえる。犬の牙には先ほどまで何かをかんでいたのか血が付いている。まだ血がたれているのですぐ前までかんでいたことが分かる。犬は立っているがバランスが取れていない。左前足が折れているようだ。
「まさか、ちょっとした油断でここまでやられるとは・・・油断しちゃいけないなぁ。」
明がため息を吐きなががら言う。そして、すぅと息を吸う。
「全てを焼き払う怒りの炎よ!敵を焦がし我を守る刃となれ!!
汝、我の行いによってその身に起こるは滅と知れ!!!」
明は右腕を突き出し喉が破れんばかりの声で言う。
「ヒートスラッシャー!」
その瞬間、式神のまわりの空気が熱く熱せられる。そして式神は炎に巻き込まれた思ったら何十個もの肉片になりその肉片は紙になり燃え尽きた。
「早く勝負が付いたけどこれじゃあこの先身が持たないな・・・」
「だったらもっと戦略を工夫しろよ」
「あきちゃん、お疲れ様」
琢磨と供子は先生と一緒に明に近づいていく。