第3話 弘法筆を択ばず?


「ダ・カーポ」
先生が呪文と唱えると怪我の痛みがなくなっていく。まだ多少痛むが先ほどよりずいぶんと楽になった。
さて、と先生が一息。
「次は犬神さんの番でしたね。式神の強さはどのようにしましょうか?」
う〜ん。と少し考えて供子は言う。
「水鏡君と同じレベルでお願いします」
いいのですか。と先生が聞き返す。しかし供子は、はい。と一言。
では。と先生が魔法陣内から出る。3人もその後を着いていき出る。先生が呪文を唱えると魔法陣の中が元通りになる。
「大丈夫か?」
明が声をかける。さっき自分が大怪我をしたばかりなのでとても心配している。
うん。と大きくうなずく。
「私のお絵かきの腕前見せてあげるね!!」
いゃ・・・普段から見てるからいいよ。と琢磨は言う。供子は頬をふくらませぶーぶーと言っている。
「準備が出来次第魔法陣の中に入りない」
「はい」
じゃ行ってくるね。と供子は言い魔法陣の中に入っていった。明と琢磨は心配そうに見送る。
地面には魔法陣、直径は100mほどその中心に供子は立つ。直径100mという事は半径50mということでその中心に立つ供子の50mは人がいないということになる。50mというと結構広いようで狭い。以前はもっと大きくグラウンドを使って訓練をしたこともあったが今回はあくまで調整。それほど大きく場所をとらずに戦う。今こうして立っている間も他の生徒が別の魔法陣で戦っている。
供子は軽く深呼吸をする。そして供子は腰に巻いてある小さなポシェットからペンなのか杖なのか遠くからでは判断の付きにくい棒を取り出す。
そして供子が構えると先生は先ほどまでと同じように1枚の紙を投げ入れる。紙が地面に付くと同時に犬のような式神になる。
式神の毛は逆立ち牙を剥いて供子を威嚇する。犬ならこれほど興奮することがあろうか、というほど供子に対して威嚇する。
供子は威嚇している式神に対し、もう少し可愛げがあると可愛いのにな。と言う。それは自分の実力に余裕がありその余裕が来るのか、ただ犬が好きでそこから言った言葉なのか分からない発言だった。ただ言えることと言えば供子は明ほど緊張はしていなくリラックスしている状態だといえる。
「始め!」
先生が合図をする。すると供子は先ほど取り出した棒を鉛筆を持つように構える。
「さぁてさて♪取り出したる魔法の鉛筆♪」
本当は鉛筆ではなく妖精の戯言、通称「ファノ」と呼ばれているものである。
供子はファノに魔力を込めると空中に円を描く。そして、炎のような絵を描きその上から矢のような絵を描く。わずか5秒ぐらいで描いた適当な絵だ。
「ヒートアロー!」
絵が実体化し炎を纏った矢が一直線に式神に目掛け飛んでいく。
式神はひょいっと炎の矢をかわす。矢は地面にあたり地面をえぐって消えた。きっと1度あたれば勝てるのだろうが一直線で飛んでいく矢はいとも簡単にかわされる。いかなる威力を持ってしても当たらなければ意味がないのは当然でしかも絵を描いて攻撃する魔法はどうしても時間がかかる。1度目は早く描いたがそれでも5秒だ。先ほどは攻撃をされなかったが今度も攻撃されないとは限らない。攻撃されたとき反撃できる手段は皆無といえるかもしれない。
供子はもう1度空中に円を描く。しかし、今度は式神が襲ってくる。
きゃぁ!!!
供子は倒れこむような感じで式神の攻撃を避ける。すぐ起き上がらないと追撃が来る。それが分かっているはずなのに供子は立ち上がろうとしない。
「供子!次が来るぞ!!」
明が叫ぶ。供子は待ってましたといわないばかりに倒れている状態のまま右足を大きく振りかざす。
「おいたをするような悪い子にはおしおきよ!」
式神が突っ込んでくるタイミングにあわせて右足で思い切り蹴り飛ばす。
式神は少しだけ吹き飛んだが上手く受身を取り体勢を整える。供子はその隙に立ち上がって構える。が
「どうした!?ケガでもしたのか!?」
今度は琢磨が叫ぶ。供子はその場にうずくまってしまったのだ。
そんな状態の供子にも式神は容赦なく牙をむき出しにしたまま飛び掛っていく。そのとき、供子が顔を上げて
「攻撃は魔法だけじゃないってね!!」
思い切り立ち上がりその勢いを利用して式神にパンチを繰り出す。見事なアッパーだ。しかし、少し吹き飛んだだけでダメージはなさそうだ。それもそのはず、供子の細い手足ではどんなに勢いをつけたところでそれほどのダメージはないだろう。供子自信それは誰よりも理解しているはずだ。
今度は上に吹き飛ばしただけあって空中に浮いている。空中にいる間はさすがに式神も受身ぐらいしかできずただ中に浮いているばかりだ。その隙に供子はすかさず絵を描く今度は雲のような絵に矢の絵だ。式神が地面につくと同時に描き終わり、すかさず供子は魔法を発動させる。
「レインアロー!!」
するとどこからともなく矢の雨が式神目掛け降ってくる。
式神は矢の雨に降られながらも供子を目掛けて突っ込んでくる。そして供子に目掛け突進をし、供子はかなりの勢いで後ろに吹っ飛ぶ。ファノが地面をガリガリと削りながら、低空飛行の状態のまま数メートル後ろに吹き飛んだ。式神はもう1度供子に向かって突進をする。供子はよけきれず先ほどと同じように吹き飛ぶ。
供子がうつぶせの状態で倒れる。式神の方も倒れた。2回突進をする気力はあったものの矢が数本刺さっている状態のまま突進をしたのでダメージが余計大きくなったようだ。
供子がうつぶせの状態のまま何かを描きそして
「すき焼き!!」
矢を数本飛ばす。何本かは式神に当たったもののほとんどが見当違いのほうへ飛んでいき地面を削るだけで終わった。
「あいつ腹へってんのか?晩飯はすき焼きにするか?」
「冗談言ってる場合と違うぞ・・・」
明に対し琢磨が突っ込みをする。そして琢磨が言ったとおり冗談を言っている場合ではなかった。動物は死ぬ一歩手前になると底力を発揮するみたいで式神もその辺は一緒なのかもしれない。式神は大きく叫ぶと思い切り供子に体当たりをする。勢いはさっきの比ではない。今度は数十メートルと吹き飛ぶ。そして体当たりをした式神も少し後ろへ飛んだ。
供子はうつぶせに倒れそのまま動かない。式神のほうは牙を剥いて供子のほうに向かって走る。距離にして30mくらいだろうか。供子はファノを地面に向け線を1本引く。
「アースクエイク!!!」
1秒もかからず魔法を発動させる。発動させた瞬間に地面は鋭い山になって式神に突き刺さる。式神は大きく穴のあいた紙になり消えた。
地面にあらかじめ描かれている魔法陣で分かりにくかったがその上にやや大きめの魔法陣を描いていた。供子はトラップという形で魔法陣を描いていたのだった。
「最初から計算どおりだったのか?」
2人と先生がいつの間にか隣にいた。半分ぐらいはね。と供子は返事を返す。
「本当はワンちゃんと鬼ごっこをしながら魔法陣を描くはずだったんだけどね」
・・・タッチ=死だな。と琢磨は突っ込む。実際にはタッチ(?)されても死ななかったわけだが。
「まぁおつかれ、今日の晩飯はリクエストどおりすき焼きにしようぜ」
供子は頭に?を浮かべている。
まだ会話は続いていたが先生が会話を中断させ供子のケガを治した。





次へ

戻る