第4話 飛び交う苦労


「うん。だいぶ良くなった」
供子は腕を大きく回しながら笑顔で言った。琢磨は大きく息を吐いた、ほっとした顔をしていた。明もだ。
明と供子の番が終わり残るは琢磨だけとなった。
2人が大変な目にあい、この訓練はとても危険なことを分かっているはずなのだが琢磨は落ちつた表情をしていた。
琢磨には考えがあったのだ。
「次はたくまくんの番よ。準備はいい?」
そこには若い女性が立っていた。年齢は20をちょっと過ぎたぐらいだろうか、とても若い先生だ。
服装は協会でシスターが来ていそうな服だ。先生はいつも学校でこの服を
「あれ?コモド先生じゃないですか、何か御用ですか?」
「今からね私が監督者なの」
「レベルは5でいいのよね?じゃ頑張ってね」
コモド先生は、準備ができたら魔法陣の中に入ってね。と、一言いって式神の準備をするためにすたすたと琢磨達から離れていった。
琢磨は呆然としていた。目が点だ。レベルを下げたかったようだ。ちなみに1度決めたら変更は不可と前日言っていた。
その様子を悟ってか明が残念だったな。と声をかける。
琢磨はしぶしぶと魔法陣の中に入っていく。なにやらつぶやいている。
一方コモド先生はしゃきっとしなさい!と叱っている。コモド先生はいつもこんな感じだ。本当に先生なのか尋ねたくなるときがよくある。授業中によくぼ〜っとしているし、よくドジもする。どっちかというと生徒の方がコモド先生の面倒を見ているようだった。そんな先生だが他の先生に何故か尊敬されているらしい。生徒の方にも人気はあったが尊敬の類とは違う。親しみのある人、例えるなら友達だ。そう、手のかかる友達。今も琢磨は先生の早とちりでレベル5の式神と戦わなくてはならなかった。
しぶしぶと直径100mぐらいある地面に大きな魔法陣が描いてある中心に立った。そして、ポケットからビー玉よりやや大きめの玉を取り出す。色は青。いや蒼といった方が近いかもしれない。透き通りそうな色をして心なしか輝いているようにも見える。琢磨はそれを握り拳をつくる、そしてその手を開くそしてそれは銃になった。スパイ映画の主人公が持っていそうな銃。それほど大きくはない。
銃等類は禁止だが、琢磨が持っているのは銃ではなく、妖精の涙、通称「ティフェリ」と呼ばれるもので正確には銃ではなく玉の事を指す。
ティフェリは自在に形を変えることができるが大きさや質量は持ち主の魔力に影響されるといわれている。今の琢磨の限界は今の銃だった。銃以外の形にもできるがあまり大きくできないので他には短剣ぐらいしかできず実践にはあまり役に立たない。ゆえに今は銃の形となっている。
「いくわよ〜」
気が抜けそうな声が聞こえた。先生は紙を1枚取り出し投げる。その紙が地面に付いた途端それは式神となって琢磨と対峙する。
紙が地面におちて犬の形となって琢磨に向かって威嚇する。
・・・・・・そのはずだったのだが今、目の前にいるのは熊だ。しかもでかい上に2本足で立っている。2m強だろうか、そのぐらいの大きさはありそうだ。
「あらあら、先生間違えちゃった。失敗、失敗♪」
「失敗、失敗♪ じゃねぇぇぇ!!!取り消してください!!!」
「別に先生は構わないけど訓練放棄になっちゃうから、あなた留年決定よ?」
「ナゼユエニィィィィィィィィィ!!!!!」
小等部で1番大切な授業だと言っても過言じゃないのよ。と笑顔でコモド先生は言う。
琢磨は大泣きするべきか嘆くべきか悩んでいた。しかし、すぐに目の前の熊をどうにかするべきという結論に至った。
「先生!あなたがミスをしたのですから少しぐらい手助けしてくださいよ!!」
琢磨は目の前の熊から視線を少しそらして先生の方を見る。コモド先生は明と供子と話をしている。何かあの一体だけのほほんとしている。ドンマイとか私もよくミスをするんですよとか失敗は誰にでもあるのよねぇとか聞こえる。罪悪感は一切感じてないみたいだ。先生一同が琢磨の視線に気づいたみたいで一通りの声援をおくり、また会話に夢中になる。
あきれ調子で見ていると熊が襲ってきた。思い切り振り上げた腕を琢磨に向かって振り落とす。琢磨はそれにいち早く気づきバックスッテップをして攻撃を避ける。そしてティフェリを熊の顔面、特に目を狙って1発打つ。
ガァン!!
すさまじい音を出して弾丸を放つ。距離はおよそ1mの近距離射撃、狙いは定まり外す要素などまるで無い。しかし・・・
「ガルッガッガッガル(そんな単純な攻撃じゃあたらねぇよボウズ)」
すさまじいスピードで避け、挑発のポーズをされた。何かムカツク。
「ガッガル!(いくぜボウズ!)」
熊がフットワークを使って襲ってくる。ワンツーとパンチを繰り出した後スリーの右回し蹴りをかます。
琢磨はワンでバックし、ツーで熊の左側の懐にはいる。スリーをしゃがんで交わした後に熊の胸の高さまで跳ぶ。
「ナイフレイン!!」
ティフェリを銃から短剣に変え高速の連続突きを短剣を持った方の手で攻撃する。5,6発決まったところで熊の右カウンターが入り吹き飛ばされ中断される。
3,4m吹き飛ばされたが素早く体制を立て直す。左の脇腹にもの凄いダメージを負ってしまった。そう長くは持たないかもしれない、短期決戦をしなければ。
「ガッルガガ・・・。ガルッガルガ、ガガッルガ!!(やるなボウズ・・・。俺をここまで苦しめたのはお前が始めてだ、しかし俺にも意地がある!!)」
熊が苦しそうに何かを言っている。しかし、琢磨は当然のことながら何を言っているか分からない。しかし次の瞬間その言葉が分かった気がする。
熊がいきなり口をあごが砕けそうなぐらい大きく開く、そして口の中が一瞬光ったと思った瞬間口からビームがでた。琢磨はかろうじて避ける。
どーん!!とかワー!!とかキャー!!とか何か後ろの方で生徒やら先生やらが騒いでいる。
もう一度熊が口を開く。本当に色々と非常識な熊だと思いながらしゃがんでビームを交わす。そして、熊の顔面に向かって地面に落ちている砂利や砂を熊の顔面に向かって投げつける。砂の一部が目に入り一瞬ひるむ。その一瞬の隙に間を詰める。が、熊は向かってくる琢磨を抱きとめるような感じで捕まえる。
ベキベキッ!!
耳障りな音が聞こえた。熊の締め付ける力は半端ではない、腕がだらんとぶら下がる。そして、熊は口を開き抱きとめる琢磨に向ける。そして・・・

チェックメイト

琢磨と熊がその場に倒れる。
琢磨にすさまじい力で締め付けられた痕以外傷は見られない。
熊の方は細長い鉄のようなものが体の内部から頭にかけて突き刺さっている。
琢磨は砂利や砂と一緒にティフェリも一緒に投げティフェリを飲み込ませた、そして熊に密着したときにティフェリの形を変えたのだ。
「あ〜あ。ひどい傷」
「すぐに治しましょうね」
と先生はいつもと変わりない口調でいう。そして杖を取り出す。
「アニマンド・ダ・カーポ」
先生が呪文を唱える。すると瞬く間に傷が治る。気のせいかもしれないが戦う前よりも調子がいいぐらいだ。
「たくちゃん、お疲れ様。一緒に帰ろう!」
今日は訓練が終わった人から帰っていいのでもう学校には半分ぐらいの生徒しかいない。
3人は少しその場にいて今日のことの反省会を簡単にすませ、先生に別れを告げる。明日は傷を癒すために最高学年は休校だ。傷を癒すといっても学校で治してくれるわけだから生徒は遊びに行ったりするのがほとんどだ。
3人は明日の予定を立てながら校門をでていく。


「あの3人の様子はどうだ?」
「無事、レベル20式神を倒したようです」
コモドがミスをして切磋には熊の姿で戦わしたようですが。と付け加えていった。
「姿などさほど問題ではない」
「それもそうですね」
赤い日差しが窓から差し込む。時刻は夕方だろうか、とても静かで物音一つしない。
立派なデスクがある。かなり高いものだろう。そこに座っている初老の男性。そして対峙しているやや若い女性。どちらも立派な正装をしている。
「さすがは、切磋家に犬神家。そして名もないがその2人に関わりながらも生きている少年。どれをとっても素晴らしい」
「ええ、同感です」
「しかも、今年は特別な年だ。私は本当に運がいい。いい駒が揃っているのだ、どんな手を使っても計画を実行せねばな」
「了解です」





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