第1記 〜2つの信念(こころ)

日本の首都東京。

この街にはまだジェノサイズの手が加わっておらず、比較的に安全だ。

その街の住宅街の中にその家はあった。

男は机に置いてあるカップを手に持ち、コーヒーを一口飲んだ。

彼の名は火鳥鷹志(かとり たかし)。

年齢は24。髪は赤色で短髪、瞳も赤で透き通るような色をしている。腕は太くもなく細くもなく、また、肌は綺麗な肌色でどこか気品差を感じさせる。

そんな彼の職業は「何でも屋」

依頼さえあればどんなことでもこなす。

ときにはボディーガード、ときには迷子の猫探し…

「あーあ、今日も暇だな。」

そういいながら机を立ってポストにある新聞紙を取りに行く。

目に映るのは他の国で起こっているジェノサイズの反乱の記事ばかりだ。

このジェノサイズというのは最近世間を騒がせている反地球団だ。

力でこの世界を制覇しようとしている馬鹿な奴らだ。

だが、このジェノサイズという軍団は不思議な力を使い、地球軍を圧倒している。

鷹志はこの記事を見ると神妙な面持ちで自分の家に入っていった。

こいつらのしていることがとても不愉快だからだ。

彼がこの仕事をしているのは多くの人々に幸せを届けたいため、こいつらは不幸を運んでいる。

そのことが許せなかった。

机に新聞を投げ捨てるとまたカップにあるコーヒーに口にした。

と、突如インターホンが鳴り響く。

鷹志はすぐさまカップを机の上に置き玄関へと急いだ。

「はい、どうぞ。」

そこにはどこかのお偉いさんなののか、綺麗な清掃をした御爺さんが立っていた。

髪は白く顔にも皺があるが目には活力があり老人とは思えない元気ぶりをうかがえる。

「この度は山野上基智(やまのうえ もとちか)様より受けましたご命令を火鳥様にお伝えに参りました。」

はっきりした口調で老人は言った。

きびきびとしている…どこかの執事であるのだろうか…

「あっ、とりあえず上って下さい。」

老人を客室に上げると鷹志は静かに腰を下ろして静かに老人の話に耳を傾けた。

「この度の依頼は我が主、山野上様をお守り戴く為に参りました。」

「と、するとボディーガードってことですね。」

「はい、そうでございます。」

話はてきぱきと進んだ。

「にしても、なぜ今頃ボディーガードなどと?今いる方たちでは不服なんですか?」

尋ねると老人は一枚の紙をデスクの上に乗せた。

その紙にある写真には少女らしき人物が写っていた。

「この人は?」

鷹志が尋ねると老人はデスクにひじを置き、俯いて答えた。

「最近山野上様には悪い噂が流れていまして。」

「悪い噂?」

老人は意外そうな顔をした。

「はい、山野上様は東京知事でございまして。」

「ああ、そうでしたね…はっはっはっ…」

鷹志は苦笑いしながら頭をかいた。

山野上一家は代々政治にトップを走ってきた有名な家門である。確かに新聞にもそんな記事を見かけたことがある。

でも誰もそんなことを信じていないと思う。

その山野上という男は非常にやさしいイメージを持つ。

テレビでは子供たちに勉強を教えたり、一緒に遊んだりする映像が浮かぶ。

「その噂を真に受けたのか、一人のスナイパーが山野上様を狙っているという情報をキャッチいたしました。」

「へぇ…で、その少女は?」

すると老人はもう一枚紙を取り出した。

そこにはさっきの少女の写真と家族構成などなど様々なことが記されていた。

「名をハルロングショット、彼女は孤高のスナイパーと聞きます。腕前は1mmたりとも狙った箇所を外さないと聞きます。」

「1mmたりともですか…。」

それほどの腕前のスナイパーから守れるかは正直不安ではあったがとりあえず山野上邸に行くことを決めた。

「ここが山野上様のお屋敷に御座います。」

鷹志はその屋敷の凄さに驚愕した。

自分が住んでいる家とは比にならない程豪華絢爛であった。

屋敷は視界に入りきらないほど大きく、また、窓ガラスのサッシなどは鉄ではな

く銀を加工したものになっている。

屋敷は絶対を白で塗装してあり清潔感を感じさせる。

中にも素人から見ても分かるような有名な美術品の数々

まさにこういうのを金持ちと言いたそうな屋敷だ。

大きな木の戸が音をたてて開けられると高級感あふれる黒い机にその男はいた。

「やあ、君があの火鳥家の鷹志君か、待ちわびたよ。」

彼こそが今回の依頼人山野上基智、その人である。

つやのある青い髪、その目からは信頼が持てる安心感のある緑色の目をしている。

服装はかなり整っていて知的な感じを醸し出している。

だけどどこか…どこか変なものを感じさせる男だ。

鷹志はそう思った。

山野上は不適に笑うと椅子を立って鷹志に握手を求めた。

鷹志は少しためらったが彼は東京最高権力者と言っていい山野上基智、しないわけにはいけない。

少々表情を曇らせたが鷹志は山野上と握手をした。

握手をした後鷹志は大きな黒いソファーに座らせられた。

山野上は机にひじを置いて手を組んで顔をそこに乗せて話し始めた。

「早速だ、爺が話したとおりに僕を守っていただきたい。凄腕スナイパーからね。」

鷹志は山野上の目をしっかり見て訊いた。

「確証は・・・あるんですか?」

山野上は微笑しながら答える。

「はは、もちろんだよ。私のところには色んな情報が入って来てね。特にこういう情報はしっかりしてないといけないし、最近では私の周りに嫌な噂までもたっている。そういうことでわが身はしっかり守らないと、と思ってた矢先の電報でね。君はあの火鳥家の戦士だしね。信頼しているよ。」

鷹志は訊いてはいけないとは思ったが訊かないわけにはいかないと思い、決心して問いただしてみた。

「噂は…本当なんですか…裏で住民から金をむしりとっているというのは…」

突如山野上の目が濁ったのが鷹志には分かった。

「ふ…君はそう思うかい?正義感の強い君には確かにそういう人は助けたくない…そういう話はよく聞く。」

山野上の異様な雰囲気に鷹志はごくりと意気をのんだ。

「いえ…確認だけはしたかったんです。俺はそういう人は助けたくない、確かにそうです。けどあなたはいつも子供たちを助けている姿が目に浮かびます。そんなひとにそんなことは出来ないと信じています。」

妙な笑いをすると椅子を立ち上がった。

「ふふ…そんな話嘘に決まっているだろう。では面行っていてくれ、僕は支度をする。おいそこのもの!この方をお連れしろ。」

お手伝いが鷹志を連れて出て行くのを確認すると山野上は爺を呼びつけた。

そして小声で爺に耳打ちをする。

「爺…あの男、もしかしたら裏切りかもしれん、そのときは爺、あの男を殺せ、爺。」

爺は殺気を放った目をする。

「おおせのままに…」

鷹志は待つこと10分、山野上が再び鷹志の前に姿を現した。

山野上は不敵な笑顔で手を振る。

「さて、行こうか鷹志君。」

今回の依頼は今から行く国会まで彼を護衛すること。

ただそれだけだ。

山野上が車に近寄ると同時に鷹志は妙な殺気を感じた。

(…スナイパーか…殺気が遠い…だが妙だ…殺すという気持ちがこもっていない…)

と、突然銃声が轟く。

山野上は銃声に気づき振り返る。

その銃弾が山野上を貫こうとした瞬間、何かがその銃弾を弾いた。

その銃弾を弾き返したのは一本の長刀だった。

刃は何かの鳥かの様な容姿で真ん中に持つ所がある。

そして柄の部分に神仏系の彫刻が彫ってある。

これが鷹志の武器Wing of phoenix(ウイング オブ フェニックス)。

鷹志はキッと上を見る。

「上ですね…そのスナイパーというのは。」

山野上の護衛部隊がすぐさま上を目指した。

しかし鷹志はその場を離れなかった。

「君は行かないのかね、鷹志君。」

鷹志は上を見ながら答えた。

「俺の請け負った依頼は貴方を守ること、もしここを離れもう一度狙撃されればお守りできません。それにあのスナイパーを殺せとは…言われてませんからね。」

鷹志の目線の先にはそのスナイパーの少女がいた。

「ほほう、遠くからの狙撃は諦めたか。」

少女は苦笑いした。

「まぁね、そこの彼が居る限り私の狙撃は当たらないだろうしね。だから…」

少女はライフルを構え鷹志を狙う。

「俺と戦うか…。」

「もちろん…そこの山野上を狙撃するためにね。」

2人の間にはそれぞれの思いが、依頼人を守る刃と、悪を断ち切る銃弾、それぞれの思いがぶつかり合う。





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