5匹目 勝利獲得
正剛は自分の気煉刀を見つめた。
今までこんなに大きくなったことは無かった。
40cmが限界であったが今は1m近くありそうである。
そうしているとみるみるうちに気煉刀のエネルギーの刀身が小さくなっていった。
ブラストの枯渇状態に再度陥ってしまったのである。
気煉刀を手で握るのもままならず気煉刀は重力に引かれて自由落下していった。
と、同時に正剛の体も地面に落ちていった。
どさっという音とともに正剛の体から赤い鮮血が広がっていった。
「正剛君!」
多論はすぐさま正剛の近くに寄り体を抱えて起こした。
「よく…頑張ってくれました。」
正剛は枯渇状態の苦しみ、そして傷の痛みに耐えながら息を荒立てながらも必死に声を絞った。
「あっ…ああ。」
「すぐに治療室に運びます。少し我慢してください。」
多論は正剛をおんぶして持ち上げた。
多論はその場を離れる前にひとついった。
「じゃあ調査員の方、お願いします。」
そういうと物陰から調査員が顔を現した。
彼らはジェノサイズ侵入の噂を聞きつけジェノサイズがどこにいるか多論しかり政府に伝える役目を負った人達である。
なので戦闘力は決して高くない。
だから参戦しなかったのだ。
しかし今はザックスは壁に後頭部を打ちつけ気絶状態、レストは正剛に斬られ瀕死。
なので確保するために出て来たのだ。
そそくさと2人を護送車に収容し、彼らは車でその場を立ち去った。
多論はブラストを全開にし自分の家の治療所へと駆けていった。
そして彼らが立ち去った後、1人の女性が坂の頂上のすぐ左にある家の屋上から飛び降りた。
「あちゃー…大変なことになったなぁ…あの多論とかいう女、只者じゃないって感じ。そしてもう1つの脅威は…」
その女性は顔をふさぎ込みながら重く口を開いた。
「中田…正剛…」
その女性はそう言うととぼとぼと夜の街に消えていった。
多論は全速力で治療所に辿り着き正剛をベットの上に寝かせた。
「正剛君…すいません…こんな傷を負わせてしまって…」
やはりこの世界に引き込まなければよかったと内心そうは思っていた多論は悔しそうに下に俯いた。
ブラストの枯渇状態から回復しつつある正剛は歪む表情を抑えて笑って応えた。
「いや…いいって。大体こうなるんじゃないかと予想して無かった俺が悪い。」
「でも…」
多論の体はぶるぶると震えていた。
そして一滴の涙が多論の目からこぼれ落ちた。
「おいおい泣くなって…大体傷を負ったのは弱い自分の仕業(せい)だ。多論は何も悪いことはしちゃいない。」
正剛がそう言ったが多論の涙はますます増すばかりだった。
「治療に入ります。」
そういって医師は入り口の扉を開けた。
「…えーと、いいかな。」
その重苦しい空気に医師も気付いた様子で少し戸惑ってしまった。
「あ、はいお願いします…」
弱弱しく多論は応えた。
「…分かりましたお嬢様。」
そう言って正剛が負っている右肩から左腰に掛けて斜めに走っている傷の右肩のところに両手をあわせ置いた。
「え…なにをするんですか。そんなことして。」
「治療ですよ。」
平然と医師は答えた。
「ブラストスキル…リペア。」
そう医師が言うとみるみるうちに傷は塞がっていった。
「お…凄いなぁ。ってブラストスキル?」
「知らないんですか?」
正剛はうんうんと頷いた。
「ま…後でお嬢様から聞くことになるでしょう。」
そうして治療に専念した。
凄いな…って顔をしながら正剛は自分の傷が治るのをまじまじと見つめた。