7匹目 突撃訪問
「わー、久しぶりだなー、正剛の部屋。」
雅ははしゃぐ様に正剛の部屋のドアを開けた。
やっぱりぐーたら生活の正剛、部屋一面が散らかっている。
「もー…前からこうだね正剛は。」
雅はご不満そうにとりあえずゴミとかを隅に除けた。
「…雅…何時戻ってきたんだ?」
突然帰ってきた雅に正剛は呆然とした。
それでも雅は態度を変えることなく平然と答えた。
「ついさっき。帰ってきたというより暫くここに滞在ってとこかな。」
「何で突然消えたんだ。俺はずっとお前のことを心配してた。」
深刻そうな正剛の表情に雅も流石にはしゃぐのを止めた。
「ごめん…言ったら私を止めるかな…って思って…」
雅はさっきまでのハイテンションから一転、しぼんだ風船の様に縮まった。
「責める積もりは無い、ただ行った理由を聞かせてほしい。」
この2人の関係はもうかれこれ4年前に遡る。
雅は財閥・黒姫の一人娘で大層可愛がられた。
昔から豪華な生活を送り食べ物は高級品、送り迎えはリムジンが当たり前のような生活を送っていた。
自分が一番偉い、そんな観念が何時しか付いていた。
それがきっかけで大きなトラブルを起こすこともあった。
その日もそのようなトラブルが起きていた。
「な…何よ!私が何をしたって言うのよ!」
雅は見知らぬヤンキーのお兄ちゃん2人に突き飛ばされ尻餅をついていた。
それでも威厳を崩すことなく虎が吼えるかのごとく怒声でその男たちに叫んだ。
「あーうるっせー貴族気取りの女(あま)が!殺されたくなかったら早く金出しな!!」
じりじりと雅を壁へと追い込んでいく。
尻餅をついたまま雅は壁へと追い込まれていった。
「あんたたちなんかに金出すわけないだろ!馬鹿!」
雅がそう言うと同時に一方の男が蹴りを雅の腹に入れた。
「いっつぅぅぅ…」
強烈な痛みに雅は腹を押さえた。
それに構わず男はぐっと雅の襟元をつかんで持ち上げた。
「ああん?金持ちお譲ちゃんちょーーと調子乗りすぎじゃないか?弱いくせに口だけは達者だな。」
じたばたと雅は暴れるがその抵抗は殆ど皆無に等しかった。
「離せぇ!」
「早く出さないとその綺麗なお顔が血に染まる羽目になるぜぇぇ。いいのかおい!」
(助けて…誰か…)
雅は怖くてお金を取り出そうとすると突然後ろに立っていた男がどさっと倒れた。
「何!」
その男が倒れたところのすぐ前には一人の少年が立っていた。
「おいおい、いい年こいた塵どもが女一人に恐喝か?情けねえな、おい。」
身長は雅と同じくらいかそれ以上、しかしその形相はとても同年代とは思えないようなものだった。
いくつもの人を病院に送ってきたという感じである。
「腕に銀のリング…そのダークブルーの髪…げっ!」
明らかに雅に絡んだ男のほうが年上だ。
だがその男は少年も見るや体がぶるぶると震えいつしか雅を放していた。
「な…中田正剛!」
脅えきった男の腹に強烈なパンチが真っ直ぐと入った。
「しょうもないやつらだ、取るならもっと手応えのあるやつにしろ。」
パンパンと手を払うと正剛はその場から立ち去ろうとした。
だがその正剛を呼び止める声が響いた。
「あ…あの!」
雅は立ち上がって煌く目で正剛の背中を見た。
「何だ?」
「お…お名前は!」
正剛は振り返り笑って答えた。
「正剛、中田正剛だ!」
そう聞くと雅は正剛に近づき両手を握った。
「ほ…惚れました、つつつ付き合ってください!」
雅は正に一目惚れだった。
雅は子供の頃からピンチの時に助けに来てくれる王子様みたいな人に憧れていた。
雅のお母さんにも小さい頃こう聞かされていた。
「あなたが困ったとき、必ず助けに来てくれる人がいるはずよ。」
正にその言葉が現実になったのだ。
「…いいぜ。お前は何回かここで見てた。お前がそう言うのなら俺は喜んでそれを受け入れる。」
こうして2人は付き合うことになった。
今まで高級品しか食べなかった雅も正剛に導かれて一般人が食べるようなラーメンやハンバーガーを食べるようになった。
「ここのラーメン美味しいね〜正剛。」
「ああ。俺がどれだけ苦労してここを探したんだと思ってるんだよ。雅。」
雅はその言葉に顔を赤らめた。
「私のために…」
「当たり前だろ。」
誰がどう見てもラブラブの2人にもいつしか別れるときが来たのだった。
ある日、突如雅は姿を消した。
正剛は何度も雅の家に足を運んだが返事は分からないの一言だけ。
ずっと正剛は心配してたのだった。
「他に男ができたのか?」
「そんなのじゃないよ!」
強く雅は正剛に伝えた。
「分かったよ…正剛には教えてあげる。その代わり誰にも言わないで…それだけは守って。」
正剛は大きく頷いた。
「俺が言うわけ無いだろ。」
「私は…ジェノサイズの一員なの…」
その言葉に正剛は理解するのに少し時間が掛かった。