1章 友との別れ 前編
小さな雲が快晴の空をゆっくりとながれている。そよ風が草や木の葉をなびかせる。
小さな丘の上に一人の男が立っていた。年は10代中ば。頭髪は赤がっており、体は細身、首には小さな巾着袋を掛けていた。
崖の下には森があり、その奥には高い山が連なっていた。男は空を見上げた。しばらく空を眺め、丘をおりて町へ向かった。
町は明るく、にぎやかだった。話し声、笑い声が聞こえ、声を張り上げ品物を売る声も聞こえてきた。子供からお年寄りまでたくさんの人が町にいた。
男は町の人々をかきわけ、町外れに向かっていく。人ごみを抜けて町から抜け、小さな森に辿り着いた。
男は一度立ち止まり、その後森の中へ進んでいく。
森には小鳥やリスなどが元気に動いている。男は小鳥やリスを見ながら森を突き進んだ。やがて男は森を抜ける。男は町外れの小さな家に辿り着く。
男がドアをノックすると、少し小柄な男が出てきた。
「あ、ハル。どうしたの?」
男は髪が青く、顔がスラリとしていた。男は少し微笑み、ハルを見つめた。
「いや、なんとなく。」ハルと呼ばれた男は顔をしかめて言う。
男はハルを家に入れた。部屋は家の見た目と同じでと狭くハルは部屋にあるイスに座った。男はお茶を持ってきて机に置く。
男は不思議そうな顔でハルに喋りかけた。
「前から思ってたんだけど首に掛けている小さな巾着袋の中身は何なんだい?」
ハルは少し間を置いて喋りだした。
「俺にも分かんない。これは俺のじいちゃんの形見なんだ。自分に危険が降り注ぐ時に巾着袋を開けろって言われてるんだ。俺も中身が気になるけど…」
ハルが渋い顔で言った。しかしすぐにハルの顔色が変わって
「カイト!!それより前に言っていた英雄の話を教えてくれよ。」
カイトはお茶を少し飲んで話し始めた。
「100年ほど前だけど悪い大男がいくつもの島、国を壊していたんだ。そこへ一人の男がその悪い大男を倒して英雄になったんだ。でもその英雄は倒してすぐに姿を消したんだって。」
「そんな強い大男を簡単に倒しちゃったの?」ハルは目を大きく見開く。
「噂によると英雄の剣に何か魔法がかかっていたらしいんだ。」
ハルは真剣に話を聞いている。ハルは少ししかめっ面をして
「その英雄の名前は何なの?」と、聞く。
カイトはあきれた様子で話しかけた。
「ハル〜名前も知らないの?その英雄の名前はアーク。悪い男のほうは何て名前だったかな…」
2人が話していると突然、町でドーンと大きな爆発音が聞こえた。続けざまに何発も聞こえる。
「何の音だ!?」
「町のほうから聞こえたぞ!!」
2人はただ事ではないと思い、町へ向かった。
森を抜けて町へ着くとそこは明るい町ではなくなっていた。家から煙が上がって燃えている。さっきまで話し声や笑い声がしていたが、今は悲鳴をあげ、うなり声に変わっていた。2人は何事かと思い、町の人に聞いた。
「おっちゃん!!どうした!?」ハルが声を張り上げる。さっきまで品物を売っていた年老いた老人が
「さっきジェノサイドデビルズの一味が町に来て、ひと暴れしていったんじゃ…」
「何だって!!?」と、カイトが声を張り上げる。
「そのジェノサイドデビルズってのは何なの?」とハルが聞く。
「知らないの!?今世界の半分を牛耳っているギャングなんだよ。自分達の思い通りにならなければ力ずくでねじ伏せているんだ。」カイトがすごい形相で言った。
「でもなんでこんな小さな町に来たんだろう?そこまで金目の物は無いし。」
次の瞬間、ドンと銃声がした。さっきまで話していた老人が撃たれて倒れていた。2人には何が起こったのかわからなかった。銃声の方を向くと黒い服を着た男が10人近くいた。そのうちの一人の右手には銃が握られており、銃口からは煙が出ている。
「虫けらがうるさいなぁ」 黒い服を着た男の後ろからサングラスを掛けた男が現れた。
「なんでこんな小さな町にジェノサイドデビルズがいる!?」と、カイトが聞いた。
サングラスを掛けた男が笑いながら
「この町にはあの英雄、アークの形見といわれる炎の玉があるとボスから聞いてな。今、総動員で探しているんだ。」と、言った。
すかさず、ハルは
「なんでそんなん探しているんだ?」と、聞く。
「昔、英雄のアークに悪の帝王、ドルクス・アルバロスは殺されたんだ。だがその時に力の源の玉が世界各地にばら撒かれたんだ。その数はうわさだが50はあるという。」
「悪の帝王?大男じゃないの?」とハルは聞いた。
「人によっては帝王と呼ぶ人もいるんだよ。」 カイトは抑えた声でハルの耳元でささやいた。
「その時にアークは一つの玉を手に入れたそうだ。だがその後、消息を絶ってしまった。そのため、探すのに苦労した。だが、ボスの話によるとこの町に子孫がいると聞いてな。今、片っ端から探してるとこなんだよ。」男は軽く笑った。
ハルがすかさず聞いた。
「だから何で玉を集めてるんだ?」男は少しムッとしたが
「その力の源を全て集めるとドルクスの悪の力を手に入れられるそうだ。そうなれば我がジェノサイドデビルズは世界を乗っ取れる。」そう言い、男は大笑いした。
「玉はひとつだけでもかなりの効果を発揮してな。持っているだけで雷を出したり、幻を見せることもできるそうだ。」
「今、私の手には2つの玉がある。それで今この町を破壊しているところだったんだが…なかなか玉が見つからなくてな。」男はそう言って首をかしげた。
「子孫のことを聞いていって知らない奴は殺していったら町の人がほとんど死んでしまった。本当にアークの子孫がいるのか疑いたくなるぜ。」 ハルは鳥肌が立った。
ハルはこのままだと殺されるのが分かった。しかし、敵はなかなか隙を見せないため、逃げることが出来なかった。
サングラスの男が近づいてきた。ハルに近づき、首もとを見た。
「おい、お前。その首にかかった袋は何だ!?見せろ!!」 男は形相を変えてハルに怒鳴る。
「いやだ!!」と、ハル。それなら力ずくと言わんばかりに首にかかった袋を掴んで引きちぎろうとする。
次の瞬間、カイトがサングラスの男の腹を蹴飛ばしていた。その衝撃でサングラスの男は手から袋を離した。カイトとハルは町外れの家に向かった。
ギャングの一味からから50メートルほど差をつけた時、轟音が何度も響いた。銃声だ。音がして少したってカイトが倒れた。腹を撃たれたらしく服が赤く染まっている。
「カイト、大丈夫か!?」
「ハル、逃げて…僕に構わないで…」
「お前を置いて逃げれるわけ無いだろ!!!」ハルが泣きながら叫ぶ。
「いいから、僕は大丈夫だから…ハル・スレット、逃げて!!」痛みをこらえて言う。
涙を袖で拭い、町外れの家に向かう。ギャングの一味も必死に追う。
森を抜けると家ではなく目の前は崖だった。森の中を抜けることに必死になっていたため、道を間違えていた。戻ろうとしたがギャング達の声がした。
ギャングの一味もハルに追いついた。皆、片手に銃を持っていた。
銃口をハルに向けた。後からサングラスの男が息を切らしながら追いついた。
「てこずらせやがって…今度こそ動くなよ…」サングラスの男が息を切らしながら言う。
少しずつハルに踏み寄っていく。ハルは今度こそ殺されると思った。手が届く距離になったところで
「WATER CANNON!!!」森の方から声がした。
森の方から水の玉が飛び出し、黒い服の男たちに当たって吹き飛ばす。カイトだった。
サングラスの男を踏んでハルのほうへ向かう。ハルは驚いて
「カイト!!なんでそんな技ができるの!?」
「僕の母の形見が水の玉だからね。母が死ぬ時、大切な人を守るために使いなさいと言われてたから…」
カイトとハルが会話している内に黒い服の男たちは体制を立て直して2人に銃口を向けていた。サングラスの男が起き上がって命令を出す。
「か、かまわず撃て〜〜!!」
「WATER WALL!!!!」何発もの銃声が響く。ハルは銃声が鳴り止むまで目を閉じた。目を開けると目の前に水の壁ができていてその中に弾が入っていた。
しかし、カイトのところには壁がなくカイトは血を吐いていた。
「なんで、俺なんかを助けるんだよ…」
「玉の能力を自分に使うにはかなり修行しないと出来ないらしいんだ…」
カイトはハルを崖から突き落とした。黒い服の男たちは崖を覗こうと走りだす。カイトは
「WATER SUFFOCATE」
突然黒い服の男たちの顔に水の玉がつき、取れなくなった。男たちは必至に取ろうとするが取れない。
「くたばれ、クソガキ」
銃声が響いた。サングラスの男がカイトに発砲していた。
「グンソーさん、どうします?」と、黒い服を着た男がサングラスの男に聞いた。
「あのガキは死んだだろ。そこの死体も崖から落としておけ。たぶんあのガキが持ってた袋の中身はアークの形見だろう。後日、炎の玉を回収する。」
黒い服の男はカイトを崖から落とそうとしたとき
「待て、ちょっと調べる。」
グンソーはカイトの服のポケットなどを調べた。するとピンポン玉ぐらいの大きさの玉が出てきた。
「これは水の玉ではないか。この町も捨てたものではないな。」
グンソーはカイトを崖から落とし、黒い服を着た男達を連れて町へ帰っていった…